【コラム】浄土真宗と音楽

宗教と音楽、そして浄土真宗と音楽のつながりとは

宗教と音楽は切っても切り離せない関係

 古今東西の宗教はそれぞれに独自の宗教音楽を発展させてきました。特にキリスト教は、「西洋音楽はキリスト教音楽である」と言われるほど、深い結びつきを持っています。グレゴリア聖歌に始まり、ミサ曲・賛美歌のような礼拝儀式に用いる音楽、また、それらに一層芸術性を高めて鑑賞の為に創作されたレクイエムやオラトリオなど、人類の遺産とも言うべき優れた作品が数々生み出されてきました。イスラム教は、教義上では音楽は官能的快楽をもたらすものとして容認されないようですが、聖典「コーラン」の読誦は、あきらかに音楽的要素を持ったものです。仏教の場合は、一般的には伝統的な声明(しょうみょう)や雅楽(ががく)が思い浮かぶでしょう。また、浄土真宗以外の宗派には、御詠歌(ごえいか)というものがありますね。

浄土真宗と音楽

 では、浄土真宗と音楽の結びつきはどうでしょうか。まず思いつくのは、親鸞聖人の「和讃(わさん)」です。当時の流行歌であった「今様(いまよう)」という旋律にのせて詠(よ)まれるように、七五調のリズムで作られていて、それが、カナ文字混じりの和(やわら)かな文章とあいまって、私たちに親しみを覚えさせてくれます。「今様」にもいろいろな旋律があったことでしょうが、あの有名な「越天楽(えてんらく)」のメロディもその一つだと云われています。

 明治になって西洋文化が入り、教育現場においてさかんに西洋音楽が取り入れられると、仏教界(特に浄土系)でも洋楽をベースに、「仏教唱歌」と呼ばれる仏さまのお徳を讃える歌を作リ始めました。西本願寺では、野村成仁(のむらせいじん)という作曲家を招聘(しょうへい)し、次々に新曲を発表していきますが、これらは「讃仏歌(さんぶつか)」と名付けられ、野村氏は「讃仏歌の父」と言われました。「報恩講(ほうおんこう)の歌」「宗祖降誕会(しゅうそごうたんえ)の歌」「み仏にいだかれて」などは、今日でもよく歌われています。その後も、日本の名だたる作曲家や詩人が創作を続け、名称も「仏教聖歌」「讃仰歌(さんごうか)」などと錯綜(さくそう)しましたが、今日では「仏教讃歌」という呼び方に落ち着いています。

 仏教讃歌は、お寺での集まりで門信徒が共に歌う愛唱歌です。代表的なものは、「真宗宗歌」と「恩徳讃(おんどくさん)」の2曲で、これらはほとんどのお寺で歌われていますが、それ以外にも実に多くの素晴らしい仏教讃歌があり、コーラス活動を通して愛好している方々もたくさんいらっしゃいます。近年はコーラスグループによる「仏教讃歌のつどい」が全国各地で活発に行われていて、東京でも築地本願寺で毎年開催されてきました。昨年には、「東京教区仏教音楽クラブ」という組織もでき、仏教音楽の輪がますます広がっていくことが期待されます。

 法要・儀式における伝統的声明や雅楽、新たに創作されてきた「音楽法要」や「音楽礼拝(らいはい)」、そして、集いで歌われる仏教讃歌と、音楽は浄土真宗の現場で深く結びついています。

 仏教音楽は、仏さまのみ教えに遇えた喜びを伝え、分かち合っていく大きな力となるものです。

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