【法話】安心を与えてくれる阿弥陀さま

失敗からの学びとは

先輩の「大丈夫」に救われた朝

 コロナ禍という状況で最低限の人数で築地本願寺に従事することになった時のことでございます。

 残り時間を告げられたことがございます。「あと、13分です」

 何があと13分なのかと申せば、築地本願寺の朝のお勤め(晨朝勤行)までの時間です。

 それはもう驚きました。スケジュール帳に記載が無いのは確認していました。いつもなら再度スケジュールを睨めっこして、その予定をその都度確認する性格です。ですがその日に限って、スケジュール帳に記載が無いと安心仕切ってしまい、目覚ましさえセットしていない有様です。気付かせてくださったのは、先輩でした。私がいないことに気づき、連絡をくださりました。

 何が起こったのか脳が追いつかず、目の前の風景がゆっくりと見えたのを覚えています。ただでさえ早口な私は焦り過ぎて、もはや何を言っているのか分からないほど早口になっていたことだと思います。先輩は、相槌を打った後たった一言、「うん。大丈夫、大丈夫。僕がしておくから、ゆっくりおいで」という言葉をくださり、緊張が解けたのを覚えています。電話を切ったあと、焦りが強くなります。不思議です。何を着れば良いか分からなくなるのです。とりあえず素っ裸になり、腕組みをしながら部屋を3周したのを覚えています。必要なものだけを身に纏い、急いで家を出ます。先輩の言葉を思い出しながらも、走ります。到着したのは7時9分のことでありました。お勤め終了後、すぐさま謝りました。怒られることは承知の上です。ですがその方は「うん。大丈夫、大丈夫」と笑顔で迎え入れてくださったことを今でも覚えています。

どうにもできない悲しみをご存知の阿弥陀さま

 今から思うと、あの時、「何で寝坊なんかしたんだ! お前なんか来るな! 出ていけ!」と怒鳴り散らされていたら、怒られたことに頭がいっぱいになり、何も手がつかない状態だったと思います。怒らず笑顔だったからこそ、失敗を失敗と受け止め、その日以来、スケジュールの確認を怠らなくなりました。

 この話は私の失敗談でありますが、もし仮に私の人生に置き換えた時にはゾッといたします。「あなたの人生あと13分ですよ」と告げられた日には、慌てふためくどころの騒ぎじゃありません。絶望してしまうと思います。また、残り期間が長ければ、周りに迷惑をかけたくないと独りで身支度をすることでしょう。本当のことを言えば、一秒先さえわからないのが私の人生であります。

 そんな私に、「大丈夫。焦らず、あなたのままでその人生を歩んでおいで、自分の人生さえどうすることもできないあなたのために、迎え入れる場所を阿弥陀が用意した」と私に安心を与えてくださる如来さまがおられます。私がどうすることもできない苦しみ、悲しみに出会っていくことをご存知の如来さまであります。私はこれからも、月日を重ねるごとに厳しいご縁に出会っていくことと思います。ひたむきに受け止めながら、南無阿弥陀仏のお念仏とご一緒の人生でございます。

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