【松本智量のようこそ、仏教シネマへ】「ペトルーニャに祝福を」

Welcome, to a Buddhist movie.
「仏教と関わりがある映画」や「深読みすれば仏教的な映画」などを〝仏教シネマ〟と称して取り上げていくコラムです。気軽にお読みください。

第64回映画「ペトルーニャに祝福を」
テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督
2019年 北マケドニア/フランス/ベルギー/クロアチア/スロヴェニア作品

 舞台は現代の北マケドニア。そんな遠国での理不尽の数々は、コメディとして描かれたのかもしれません。が、それらのことごとくが現代日本に実在しているので、笑いよりも苦味が先に立ちます。

 主人公の女性・ペトルーニャは32歳。独身。大学では歴史を専攻し、優秀な成績で卒業しながら、その能力を活かす仕事には恵まれず、同居する親からも疎まれながらの毎日を送っています。

 その日、就職面接に行った縫製工場では、セクハラを受けたあげくの不採用。やるせない帰路でペトルーニャは、地元の祭りに遭遇します。司祭によって川に投げ入れられた十字架を、最初に掴み取った者は1年間の幸せが約束されるというもの。ペトルーニャは思わず川に飛び込み、見事十字架を手にします。しかし、「女が取るのは禁止だ!」「罰当たりのバケモノ!」といきり立った男たちによりペトルーニャは攻撃の的になってしまいます。母親さえ、伝統に従わなかった娘を理解できません。そのあげくに保護の名目ではありますが、警察に勾留されてしまいます。

 宗教における女性差別の歴史と実態は実に根深いものです。それは仏教も、浄土真宗も、例外ではありません。過去の話でもありません。経典にある差別的記述の扱いや、寺院及び教団運営における性的役割や男女比の是正などはまだ現在進行中の課題です。それへどう取り組むかは、宗教の真実性を計るひとつの物差しとも言えると思います。

 ラストで、警察署を出るペトルーニャから放たれる一言。これを痛快と思えたら幸い。私は宗教者としても男性としても、こちらへの痛打と感じました。

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