【多田修の落語寺】「堀の内」

落語は仏教の説法から始まりました。
だから落語には、仏教に縁の深い話がいろいろあります。
このコラムでは、そんな落語と仏教の関係を紹介していきます。

演題 堀の内

そそっかしい男がいました。歩いていて体がかたむくと思ったら、片足に下駄、もう一方に草履をはいていました。そそっかしいのを治したいと、厄除けなどにご利益のある「堀の内のお祖師(そし)さま」(日蓮宗の妙法(みょうほう)寺)へお参りすることにしました。主人公の自宅は神田にあるので堀の内(杉並区)は西ですが、なぜか東の両国へ行ってしまい、道を尋ねながら堀の内にどうにかたどり着きました。お寺ではさい銭箱に財布ごと投げ、
持参したお弁当を境内で食べようとしたら弁当箱ではなくマクラだったなど、お参りしながらてんやわんや。

 「本来の教えはそうではない」と言われそうですが、ご利益を目当てにお寺へお参りするのはよくあることです。私たちには「〇〇したい」と思うことがいろいろありますが、そのための行動を続けるのは簡単ではありません。お参りすることで自分の決意を確認し、続けやすくなるなら、悪いことではないでしょう。

 ところで、妙法寺の境内には作家・有吉佐和子さんの碑があり、命日の8月30日には「有吉忌」が勤められます。有吉さんはクリスチャンですが、自宅近くの妙法寺に親しみ、幼少の頃から境内を散策することが多かったとのことです。

『堀の内』を楽しみたい人へ、おすすめの一枚

春風亭一之輔(しゅんぷうていいちのすけ)師匠の「毎日新聞落語会シリーズ 春風亭一之輔2 子別れ/堀の内」(SonyMusicDirect)を紹介します。一之輔師匠は若手の頃から実力を注目され、2012(平成24)年に21人抜きで真打ちに昇進しました。

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