【多田修の落語寺】「鼓が滝」

落語は仏教の説法から始まりました。
だから落語には、仏教に縁の深い話がいろいろあります。
このコラムでは、そんな落語と仏教の関係を紹介していきます。

演題 鼓(つつみ)が滝(たき)

 僧侶であり歌人としても知られる、西行(さいぎょう)法師が主人公です。話の舞台は諸説ありますが、今の兵庫県川西市にあった鼓ヶ滝(つつみがたき)とされます。ここは古くは名所として知られていました(ただし江戸時代の『摂津名所図会(せっつめいしょずえ)』によると、滝はすでになくなっていて、地名だけが残っていました)。

 そこを西行が歌を詠(よ)みに訪れました。納得のいく一首ができ、帰ろうとしたら道に迷ってしまいました。夜になり、山中の粗末な家に泊まらせてもらうことにしました。その家で西行が先ほどの一首を聞かせると、家人が「ここを直すと良い」「そこを変えると良い」と次々に口出し。言われたとおりにすると、歌がさらに良くなりました。この家人の正体は?

 歌に自信があるはずの西行が、立派とは言えない身なりの人のアドバイスを受け入れて、歌に磨きをかけた。大成する人は「人を見かけで判断しない」「自信があることでも他人の意見を聞いてみる」ことの大切さを知っているのです。

『鼓が滝』を楽しみたい人へ、おすすめの一枚

三遊亭圓窓(さんゆうていえんそう)師匠の「朝日名人会ライヴシリーズ52三遊亭圓窓2/鼓が滝・写経猿」(SonyMusicDirect)を紹介します。圓窓師匠は持ちネタが非常に豊富で、古典だけでなく創作落語にも取り組んでいます。このCD に収録されている「写経猿」は、新潟県の民話を題材に創作された、興味深い話です。

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