悟りの深浅を試していた
「一言、ご挨拶を申し述べます」―儀式などのときに、よく聞かれる言葉です。挨拶状などという手紙が来たりもします。ちょっとすごんで「挨拶してやるぞ」とか、冷たく「ご挨拶ですね」とか、挨拶は今では日常語になりました。
しかし、挨拶はもともと仏教語なのです。挨は「押す」こと。拶は「せまる」という意味から、挨拶は、前にあるものを押しのけて進み出ることをいいます。
禅家では、「一挨一拶(いちあいいっさつ)」といって、師匠が門下の僧に、または修行僧同士があるいは軽く、あるいは強く、言葉や動作で、その悟りの深浅を試すことがあります。これが挨拶なのです。
そこから転じて、やさしく応答とか返礼、儀礼や親愛の言葉として使われるようになりました。
最近は、日常の挨拶が少なくなったように思います。日々の暮らしを円滑に過ごすためには、まず挨拶からですね。
出典: くらしの仏教語豆事典