【多田修の落語寺】「寿限無」

落語は仏教の説法から始まりました。
だから落語には、仏教に縁の深い話がいろいろあります。
このコラムでは、そんな落語と仏教の関係を紹介していきます。

演題 寿限無

 今回紹介するのは、「寿限無」です。「寿限無寿限無五劫のすり切れ……」の長い長い名前でご存じの方も多いでしょう。話は、生まれた子どもに名前をつけるため、お坊さんに相談に行くことから始まります。そこでいろいろな案を出してもらったのですが、それを全部つけたので、とてつもなく長い名前になり、名前を呼ぶだけで一苦労。

 この長い名前の中にある「寿限無」は、「寿命に限りがない」という意味で、これは阿弥陀如来の別名、無量寿仏(限りない寿命の仏)の「無量寿」と同じ意味です(もっとも、本来の漢字の並べ方なら「寿限無」ではなく「寿無限」となるべきなのですが)。阿弥陀如来は、命あるものすべてを救うためにはどうすればよいか、計り知れない時間をかけて考えられました。その時間が「五劫」です。浄土真宗でよく唱える「正信偈」の一節に「五劫思惟之摂受」とありますから、聞き覚えのある方も多いことでしょう。

 この長い名前は、阿弥陀如来にちなんでつけられています。そう考えると、ありがたい話です。それに、この落語では名前をつけるにあたって、お坊さんに相談しています。ここには、お坊さんが庶民にとって身近な知識人だった様子が描えがかれています(ただし、相談相手をお坊さんではなく、ご隠居さんにして演じられる方もいます)。

『寿限無』を楽しみたい人へ、おすすめの一枚

「寿限無」は多くの方が演じられていますが、ここでは柳家花緑師匠のCD『じゅげむ』(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)をご紹介します。花緑師匠はNHKの子ども番組「にほんごであそぼ」に出演され、そこで演じた「寿限無」が子どもたちの間で話題になりました。

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA