生きている今も たぶん死ぬ時も 腹はすわっていない 「それでいいのだよ」

【今月のひとこと】【2020年9月】

 新型コロナウイルス感染症は、いまなお世界中にひろがりつづけ、感染者・死亡者の数は増える一方です。昨日まで元気だった方が、突然、病に襲われ、最悪の場合には死に至るというきびしい状況のなか、多くの人々が不安をかかえながら生活しています。自分や他の人のいのちを守るために、医学的・科学的に最善を尽くして行動することが求められています。

 誰しも「健康で長生きしたい」「まだ死にたくない」という思いを抱きながら生活していますが、生まれてきたものは必ず死ぬということがこの世の真実です。その真実をありのままに受け入れることができず、生きることのみにとらわれ、死ぬことを遠ざけながら、日々を過ごしているのが、この私です。

 そのような私たちの姿を哀れみ、この世の真実に気づかせようと、あの手この手で呼びかけはたらき続けてくださるのが阿弥陀さまという仏さまです。自分中心の心でしか物事をとらえることのできないこの私を、「そのままの姿で救う」と救いのはたらきを振り向けてくださっているのです。

 我利我欲(がりがよく)の生活から逃れられない私たちは、すべて思い通りになることはないので、不平・不安を抱えたまま生きていくほかはありません。しかし阿弥陀さまの救いに出遇うとき、力強く生きていく道が開かれていきます。そうは言っても、生きている今も、そしてたぶん死ぬ時も、心がさだまらず不安がいっぱいであり続けるのが私たちです。それを「腹はすわっていない」と表わしています。しかし、そのような私たちに、「そのまま命を終えてもいいのですよ」と、やさしくよび続けてくださるのが、阿弥陀さまです。それを、「それでいいのだよ」と表わしています。つまり、「それでいいのだよ」は、「いい」とか「悪い」とかを、私たちが判断することではありません。私たちの側は、「そのまま救う」とのおよびかけを、「そのまま」受け入れるだけなのです。私たちにとっての生き死にの一大事については、この阿弥陀さまの救いのはたらきによるしかないのです。ただただ「ありがとう」のお念仏を申しつつ、気をつけて精いっぱい生きてゆきましょう。